競業避止義務 (きょうぎょうひしぎむ)
M&A後に売り手が一定の期間・地域・事業範囲で競合行為をしないと約束する条項です。
買い手が取得する営業権(のれん)を守り、対価の妥当性を担保する目的があります。
対象行為(新規参入、顧客・従業員の引き抜き等)、期間・地域・事業範囲、違反時の措置(差止め・違約金など)を明確に定めます。
英語表記
Duty Not To Compete
役割・実務での使われ方
M&Aの実務において、この義務は買い手のリスクを低減し、事業の安定的な承継を確実にするために極めて重要な役割を果たします。
買収価値(のれん)の保護
売り手が譲渡した事業のすぐ近くで同種の事業を始めたり、既存の顧客を奪ったりすることを防ぎます。
これにより、買い手は計画通りの収益を確保しやすくなります。
主要な取引先や従業員の流出防止
対象行為として単なる新規参入だけでなく、既存顧客への営業や熟練した従業員の引き抜きを禁止事項として明確に定めます。
一般的なビジネス契約での活用
M&A以外でも、役員の就任時や従業員の退職時に社外秘の情報やノウハウを競合他社で利用しないよう、雇用契約や就業規則の一部として結ばれることが一般的です。
注意点
合理的な範囲の設定(期間・地域・事業範囲)
制限が広すぎたり期間が長すぎたりする場合、公序良俗に反する(職業選択の自由を不当に制限する)とみなされ、法的に無効となるリスクがあります。
期間に関しての明確な定めはありませんが、実務的には、5年〜10年程度の期間を設定することが多く、事業の実態に合わせた「妥当な範囲」の設計が不可欠です。
違反時のペナルティの明確化
義務に違反した場合に備え、競合行為の「差止め」や「損害賠償(違約金)」などの措置を最終契約書(SPA)に具体的に明記しておく必要があります。
会社法上の規定
事業譲渡の場合、会社法(第21条)によって「同一または隣接する市区町村で、20年間は競業を行ってはならない」という原則がありますが、実務ではこれとは別に特約で詳細な条件を合意することがほとんどです。