第3回3金庫経営塾合同交流会【前編】
次世代経営者の成長をサポートする
次世代経営者のさらなる「学び」と「出会い」のために
2025年末時点で遠賀信用金庫(福岡県)では「おんしん未来創世塾」を11期、九州ひぜん信用金庫(佐賀県)では「ひぜしん未来塾」を11期、たちばな信用金庫(長崎県)では「たちばな未来塾」を14期継続して開催してきました。同じ九州地区で経営を営む次世代経営者に対し、共に学ぶことで事業に対する意欲を高めていただくこと、そして地域を越えた異業種交流会を通じて経営者仲間を作っていただくことを目的として、24年に第1回目となる3金庫経営塾合同交流会を開催しました。
第1回は博多(福岡県)にて開催し、前半では遠賀信用金庫の取引先である、株式会社グラノ24Kの代表である小役丸秀一氏に登壇いただきました。小役丸氏は創業の背景や、地元の農作物や魚介類を用いて加工品を製造する2次産業、それらを提供するレストランや旅館の運営の3次産業、これらを掛け合わせた6次産業化の実現と、事業への熱い想いを語ってくださいました。後半では、各信用金庫の次世代経営塾修了生を交えたセッション企画を行い、学びを深める機会を創出しました。
第2回は武雄温泉(佐賀県)にて、「中小企業経営者の「最後の大仕事」〜会社を強くする事業承継の考え方と選択〜」をテーマに開催しました。「ひぜしん未来塾」の第1期生で株式会社Hセレクションの代表である外尾純一氏に、事業承継における経験と経営塾参加のきっかけから自身の経営に役立ったこと、後継者としての第三者承継(M&A)を活用した成長戦略の取り組みについて語っていただきました。
第3回目を迎える今回は、会場を長崎に移し、「スタジアムシティホテル長崎」にて開催。冒頭では、たちばな信用金庫理事長の早田義教氏より、長崎の歴史や長崎駅前の再開発についてのお話をいただきました。
その後、『「承継という選択」〜次世代経営への転換点〜』をテーマに、それぞれに事業承継を経験された「たちばな未来塾」の修了生3名に登壇いただき、事業承継の経緯や苦労したことについて語っていただきました。さらに、モデレーターを務める弊社代表の鈴木智博によるセッション企画を開催することで、理屈だけではうまくいかない事業承継の「リアル」な部分について深掘りしました。
その後の交流会は、参加者同士が異業種交流をするきっかけとなりました。合同交流会は、単なる学びだけの場ではなく、積極的な次世代経営者が一堂に会するため、さまざまなビジネスマッチングにもつながる機会となっています。
身近なロールモデルに触れ学びを自社に落とし込む
各地で実施されている次世代経営塾の形式はさまざまですが、その多くは地域の金融機関のもとで企画・開催されています。経営塾の運営には課題があり、受講期間中は必死に学ぶもののその後の経営にうまく活かせない、学びを経営に落とし込めないなど、一過性の取り組みとなってしまうケースも見受けられます。
次世代経営塾を通じて経営者の成長をサポートする本質は、受講中だけではなく「受講後」にあります。経営塾で学んだ理論を経営に反映することは簡単なことではありませんが、試行錯誤をしながら実践した経営者には着実な成長を遂げているケースが多く、これまでもその事例を紹介してきました。
学びを実践できる経営者とそうでない経営者の決定的な違いはどこにあるのでしょうか。それは、決めたことをやり抜くという強い決意と実行力は当然ですが、「学びを自社に落とし込む力・イメージ」にあると考えます。ところが、理論をいかに実業に落とし込むか、経営塾で得た気づきをどのように自社に転換するか・・・・・・。ここで止まってしまうケースが多く見られます。
合同交流会開催の意図は学びを自社に落とし込む力をつける、またはそれをイメージしてもらうことにあります。講演会や勉強会、セッション企画を通じて、同じ経営塾で学んだ仲間たちがどのように自社に落とし込んでいったのか、そのリアルで身近なロールモデルに触れることで、自社に落とし込むためのヒントを得ることができるのです。また、若い後継者にとっては先輩経営者の知見に触れると共に、経営塾修了生が語るその後10年の歩みはイメージしやすいロールモデルとして、多くの学びへと昇華されます。
次世代経営塾をはじめ合同交流会など、今後も経営者のみなさまに役立てていただけますと幸いです。
3信用金庫における次世代経営塾運営の概要
3信用金庫にうかがった次世代経営塾の運営状況について紹介します。
●九州ひぜん信用金庫 ひぜしん未来塾
九州ひぜん信用金庫では14年に地域の若手経営者、後継者の成長を支援するため、「ひぜしん未来塾」を立ち上げ、昨年までで11期、累計306名が修了。修了後も継続的な支援を行うため、ひぜしんビジネスクラブの会員として経営セミナーや交流会をはじめ、さまざまな経営支援を行っています。ひぜしん未来塾を通じて、若い経営者や後継者がひぜしんビジネスクラブに参画することで、クラブの新陳代謝が起こっています。
●遠賀信用金庫 おんしん未来創世塾
遠賀信用金庫では13年に「おんしん未来創世塾」を立ち上げ、地域の次世代経営者に対する経営支援を強化してきました。発足以降、コロナ禍で2年ほど休講したものの、25年末時点で11期、累計356名の修了生に出会いと学びの機会を提供しています。これまでは本部である遠賀郡岡垣町にて開催されていましたが、第12期は博多駅周辺での開催を予定しています。
●たちばな信用金庫 たちばな未来塾
たちばな信用金庫では11年に「たちばな未来塾」を創設し、地域の若手経営者や後継者への支援を継続してきました。25年末時点では14期、累計387名が受講。たちばな信用金庫内でも大半の職員が講座に参加・受講していることもあり、次世代経営者支援として浸透してきました。17年には修了生を中心とした、「たちばなビジネスクラブ未来」も発足し、継続的な支援を行っています。
第3回3金庫経営塾合同交流会 参加者のアンケート結果
参加者に実施したアンケートでは、約96%の人が「大変参考になった」「参考になった」と回答。また、参加者の多くは次世代経営塾の修了生のため、「受講時と比べて現在の会社の業績はいかがでしょうか」という問いを設けたところ、約79%の人が「大変良くなった」「良くなった」と回答しました。受講後の変化や経営塾の内容をもとに実践してきたことについては、以下のような声がありました。
- 「経営は数字だけではなく、人や理念、地域との関係性を含めて考えることが大切である」と改めて感じるようになりました。特に、理念を言語化し職員へ伝えていくことや、組織として同じ方向を向くための仕組みづくりを意識するようになりました。
- 経営理念、決算書など今までなんとなくやらないといけないと思いながらも見てなかった部分と向き合うようになりました。
- 仲間のつながりが強くなりました。 商取引も成立しました。
- 売上ではなく、利益を意識した経営に変えていきました。
- 経営者の為の座学として最初に学ぶことができ、今でも当時の資料を見返すことがあります。
理事長コメント
九州ひぜん信用金庫理事長 石橋 正広氏
「第3回の3金庫経営塾合同交流会も非常に良い機会になりました。お客様の事業承継における生の声を聴け、参加した当庫の会員様にも大変喜んでいただきました。取引先の持続的成長を支援するのが我々の仕事であり、こういった事業承継を経験された方が、当時抱えていた悩みや今の悩みといった事例をお伺いすることで、今後の支援の在り方のヒントをいただく機会ともなりました」
遠賀信用金庫理事長 井野 敬一郎氏
「本日ご参加された若手経営者の皆様の表情や発言を聞いていく中で、次世代経営者の活力、エネルギーを本当に強く感じました。こういった次世代経営者の方、特に各信金の経営塾を通じて経営手法を学び、異業種交流を通じて知見を深めてきた経営者(修了生)だからこそ、このエネルギーを発せられるのだと感じましたし、地域の信用金庫である我々としても、こういった活力ある次世代経営者をより育成し、継続的なサポートをしていくことの大切さを改めて強く感じました」
※本記事は、当社発行の月刊誌『月刊次世代経営者』2026年7月号の記事をもとに、Web用に一部加筆・修正しています。記事の内容は執筆当時の情報に基づきます。