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両利きの経営 (りょうききのけいえい)

既存事業を磨き上げる「深化」と、新しい事業を試す「探索」を同時に進め、収益力と将来成長の両立を図る経営の考え方です。
相場変動に耐える収益基盤を守りつつ、実験の仕組みで次の柱を育てる発想です。
提唱者はチャールズ・A・オライリー氏(スタンフォード大学経営大学院教授)とマイケル・L・タッシュマン氏(ハーバード・ビジネススクール教授)。
両利きの経営を実践するためには、事業ポートフォリオの見直し(不採算の切り出し・カーブアウト、成長分野の買収)と最適化が不可欠です。

役割・実務での使われ方

M&Aは、「両利きの経営」をスピーディーに実践するための最も有力な手段です。

「探索」のための買収(グロースM&A)

自社にない技術、人材、販路を持つスタートアップや異業種企業を買収することで、自前で時間をかけることなく新規事業(探索)の芽を急速に育てます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、隣接市場への進出などで多く見られます。

「深化」のための資源捻出(事業譲渡・カーブアウト)

事業ポートフォリオを分析し、自社で「深化」させるべきコア事業以外(ノンコア事業)や不採算事業を第三者に譲渡します。これにより、経営資源(資金・人材)を集中させ、コア事業の収益力をさらに高めると同時に、「探索」のための投資余力を生み出します。

注意点

「深化」と「探索」の強烈なコンフリクト

効率と規律を求める「深化」と、失敗を許容し創造性を求める「探索」は、組織文化や評価基準が真逆です。これらを同じ組織内で共存させるのは極めて難しく、トップ経営陣の強力なリーダーシップと、それぞれの活動に適した組織設計(組織的分離など)がなければ、「深化」チームが「探索」の芽を潰してしまうリスクがあります。

M&Aにおける統合(PMI)の難易度

特に「探索」目的で買収した企業(スタートアップなど)を自社の既存の仕組みに無理に統合しようとすると、買収先の機動性や文化が失われ、シナジーが生まれないどころか、キーマンの離職を招く恐れがあります。「探索」部隊としての独立性をどう保つか、PMI(買収後の統合)の設計が非常に重要です。

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