用語集

Glossary

源泉徴収 (げんせんちょうしゅう)

給与や配当などを支払う企業側が、受け取る側が本来納めるべき税金をあらかじめ差し引き、代わりに国へ納付する制度のことです。
M&A実務においては、一般的な「株式譲渡」では売り手自身が確定申告を行うため原則不要ですが、特定のケースで重要になります。
代表的なのが、対象企業がオーナーから株式を買い取る「自己株式の取得」等で発生するみなし配当や、退任する経営者へ支払われる役員退職金、海外企業とのクロスボーダーM&Aなどです。これらの場合、支払いを行う企業側に源泉徴収の義務が生じます。

英語表記

Withholding Tax

役割・実務での使われ方

「みなし配当」や「役員退職金」発生時の適正な税務処理の完遂

M&Aのスキームにおいて、対象企業が売り手オーナーから直接株式を買い取る「自己株式の取得」を行った場合、対価の一部がみなし配当となり、支払い側(対象企業)に源泉徴収義務が生じます。また、M&A成立に伴い勇退する経営者へ役員退職金を支給する際にも源泉徴収が必要です。これらの手続きを法的に正しく処理し、後々の税務トラブルを防ぐための実務上の重要プロセスとなります。

クロスボーダーM&Aにおける「非居住者への支払い」の税務判定

外国企業を買収したり、海外の株主から株式を取得したりするクロスボーダーM&Aにおいては、支払い先が「非居住者(海外の企業や個人)」となります。
この場合、支払う対価(配当、使用料、利子など)に対して日本国内で源泉徴収が必要かどうかの判定基準となります。相手国との間に「租税条約」が結ばれている場合は税率が免除・軽減されることもあるため、国際税務を整理する上での核となります。

買い手側(支払い側)の「潜在的な税務リスク」の回避

源泉徴収制度の最大の特徴は、税金を納める義務が「受け取る側」ではなく「支払う側(源泉徴収義務者)」にあることです。
M&Aのクロージング(決済)において、本来差し引くべき税金を差し引かずに全額を売り手に支払ってしまうと、後日税務調査が入った際、支払い側の企業が自腹で税金や重いペナルティ(不納付加算税など)を立て替え払いしなければならないリスクがあります。これを回避するための防御策として機能します。

注意点

「支払い側の企業」がペナルティを負う重い責任

万が一、源泉徴収の手続きや期限内の納付を漏らしてしまった場合、追徴課税や延滞税などのペナルティを被るのは、お金を受け取った売り手ではなく「支払いを行った企業(買い手や対象会社)」です。M&A後の企業価値を毀損する重大なリスクとなるため、決済前の確認が絶対条件です。

通常の「株式譲渡」では原則不要だが、例外に注意

一般的な国内の株式譲渡スキームであれば、売り手自身が申告分離課税として確定申告を行うため、買い手企業による源泉徴収は不要です。しかし、一部でも退職金や組織再編が絡む複雑なスキームを組む場合は、途端に源泉徴収の論点が浮上するため、「今回は株式譲渡だから関係ない」と思い込まないことが重要です。

実行前の税理士等への確認の徹底

源泉徴収の要否や税率の計算、特にクロスボーダー案件における租税条約の適用判断などは、極めて専門的で複雑です。スキームが確定し決済日(クロージング日)を迎える前に、M&Aや国際税務に強い税理士・公認会計士に具体的な支払いフローを提示し、源泉徴収義務の有無を精緻に確認することが不可欠です。

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