全部取得条項付種類株式 (ぜんぶしゅとくじょうこうつきしゅるいかぶしき)
株主総会の特別決議を経ることで、会社側が株主の個別の同意なしに「すべて強制的に買い取ることができる」条件がついた株式のことです。
M&Aの実務においては、買収後に残った少数株主を金銭で退場させ、会社を100%完全子会社化する「スクイーズアウト(少数株主の排除)」の代表的な手法として利用されてきました。
英語表記
Class Shares Subject to Wholly Call
役割・実務での使われ方
100%完全子会社化の実現とスクイーズアウトの実行
M&A(特にTOB:株式公開買付など)を行った後、買収に応じてくれなかった少数の株主が残ってしまうことがあります。
少数株主が残っていると、経営の意思決定が遅れたり、株主総会の運営コストがかかり続けたりするため、この「全部取得条項付種類株式」を用いたスキームを活用して強制的に株式を買い取り、100%完全子会社化を実現する役割を果たします。
少数株主からの合法的な株式集約
親族内での事業承継や、過去の経営者の知人など、歴史的な背景で自社株が少数株主に分散してしまっているケースがあります。
将来のM&Aや上場(IPO)の障害となるため、会社主導で散らばった株式を一箇所に集約(整理)するための法的なツールとして使われます。
注意点
「特別決議」を可決できる議決権(2/3以上)が前提
このスキームを発動するためには、事前の株主総会で「特別決議」を可決する必要があります。
つまり、買い手(あるいは大株主)が事前に全体の3分の2以上の議決権を確保していることが大前提となる点に注意が必要です。
手続きが極めて煩雑である点
株主総会を複数回開く必要があるなど、手続き完了までに最低でも2ヶ月程度の期間と多大な労力がかかります。また、裁判所の許可が必要になるケースもあります。
現在は「株式併合」や「株式売渡請求」が主流に
かつてはこの全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウトが主流でしたが、会社法の改正により、現在ではより手続きがシンプルで税務上も有利になりやすい「株式併合」や、90%以上の議決権を持つ大株主が直接買い取れる「特別支配株主の株式売渡請求」といった別手法が使われるケースが圧倒的に多くなっています。実務上は「過去によく使われていた伝統的な手法」として理解しておくのが適切です。