差入保証金 (さしいれほしょうきん)
契約の履行を担保するため相手方に一時的に預ける資金で、敷金・建設協力金・営業保証金などが該当します。
原則は契約終了時に返還されますが、契約により一部が戻らない場合もあります。
会計上は貸借対照表の固定資産「投資その他の資産」に計上し、返還されない部分は長期前払費用などで処理します。
M&Aでは回収条件や未返還リスクをデューデリジェンス(DD)で確認し、価格調整や表明保証に反映します。
役割・実務での使われ方
M&Aのプロセス、特にデューデリジェンス(DD)やバリュエーション(企業価値評価)において、以下の視点で厳密にチェックされます。
「実質的な資産価値」の評価(時価修正)
貸借対照表(BS)には「差入保証金」として全額計上されていても、賃貸借契約書を確認すると「解約時に20%を償却(没収)する」といった条項がついているケースが多々あります。M&Aの株価算定では、この戻ってこない分を差し引き、資産価値を減額修正(時価評価)する必要があります。
運転資本・ネットデットの調整項目
M&Aの価格交渉において、この保証金を「事業運営に必要な資金(運転資本)」とみなすか、「現金同等物(ネットデットのマイナス項目)」として扱うかで、最終的な株式価値が変わることがあります。
チェンジオブコントロール条項のトリガー
M&A(株主の変更)を行う際、オフィスや店舗の賃貸借契約において「保証金の積み増し」や「契約の再締結」が求められるケースがあり、想定外の出費とならないよう確認が必要です。
注意点
回収可能性(貸主の信用リスク)
預け先(家主や取引先)の経営状態が悪化している場合、契約終了時に保証金が返還されないリスクがあります。特に、相手先が個人の場合や、経営難のビルオーナーの場合は、評価額をゼロ(引当金計上)とみなす厳しい判断が必要なこともあります。
返還時期のタイムラグ
一般的に、オフィスや店舗の保証金は「明け渡し後、3〜6ヶ月後」に返還されます。資金繰り計画において、解約してすぐ現金化できるわけではない点に注意が必要です。
「建設協力金」との違い
差入保証金の一種ですが、「建設協力金」は店舗建設費を安くするために貸主へ無利息で貸し付ける性質のものです。
長期にわたり分割返済される契約になっていることが多く、現在の価値(現在価値割引)に引き直すと、簿価よりも大幅に価値が低くなることがあります。