ヒストリカル・ボラティリティ(HV) (ひすとりかる・ぼらてぃりてぃ)
過去の価格変動の大きさ(値動きのぶれ幅)を統計的に表した指標です。一定期間の株価や為替などの価格データを基に、平均からどれだけ変動したか(標準偏差・分散など)を計算し、「値動きが大きい=ボラティリティが高い」「小さい=低い」と評価します。
M&Aでは、対象企業の株価や関連指標の変動性を捉える際の参考として使われ、DCF法の割引率設定や類似上場企業との比較にも活用されます。
なお、将来の予想変動を表すインプライド・ボラティリティとは区別される概念です。
英語表記
Historical Volatility
役割・実務での使われ方
特に企業価値評価(バリュエーション)の局面で、対象企業の「事業リスクの大きさ」を測るために参照されます。
割引率(WACC)の算定
将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く際、リスクが高い(=ボラティリティが高い)ほど、割引率を高く設定する必要があります。
HVは、そのリスクプレミアムを見積もるための基礎データとなります。
類似会社比較法での選定基準
評価対象が非上場企業の場合、直接HVを算出できないため、事業内容や規模が似ている上場企業を選定します。
その際、各社のHVを確認し、リスク特性が極端に乖離していないかを確認します。
ストックオプションの評価
役員報酬やM&A対価としてストックオプションを用いる場合、その公正価値を算定する(ブラック・ショールズ・モデル等)ための重要な入力変数となります。
注意点
「過去」のデータであること
あくまで過去の変動実績であり、将来の変動(リスク)を保証するものではありません。
将来の予想変動率である「インプライド・ボラティリティ」とは明確に区別して理解する必要があります。
計測期間による数値の変動
算出期間(20日、90日、250日など)によって数値が大きく異なる場合があります。
M&Aの実務では、短期的なノイズを排除するため、比較的長期(1年〜数年)のデータや、複数の期間を比較して判断することが一般的です。
非上場企業の扱い
株価が存在しない非上場企業の場合、直接算出ができません。そのため、同業種の上場企業のHVを参考に推計することになります。