用語集

Glossary

負ののれん (ふののれん)

買収価格が対象企業の純資産(資産から負債を引いた時価)よりも安くなった場合に発生する差額のことです。
ブランド力などのプラスの価値を示すのれんとは逆の現象です。主に、対象企業が将来の収益性に深刻な問題を抱えていたり、多額の簿外債務や訴訟リスクなどが懸念されたりする場合に、それらのマイナス要因が価格に反映されることで生じます。

英語表記

Negative Goodwill

役割・実務での使われ方

再生型M&Aにおける「リスクの顕在化」のシグナル

負ののれんが発生するということは、買い手が「帳簿上の資産価値ほどの価値はない」と判断したことを意味します。
これには、将来の収益力低下、多額の簿外債務リスク、係争中の訴訟、早急なリストラが必要な状況など、目に見えにくい重大なマイナス要因(隠れた負債)が存在するケースがほとんどです。したがって、実務では「お買い得」というよりは、「再生難易度が高い案件」というシグナルとして受け止められます。

買収初年度の「決算へのインパクト(一時的な利益)」

会計上、負ののれんは発生した年度に一括で「特別利益(発生益)」として計上されます。これにより、買い手企業の当期純利益は一時的に大きく押し上げられます。
M&A直後の決算見栄えが良くなる側面がありますが、これはあくまで会計上の処理であり、本業の稼ぐ力(営業利益)が向上したわけではない点に留意が必要です。

PMIにおける「構造改革の原資」

計上された特別利益は、買収後に必要となる事業再構築費用(設備の統廃合、人員整理に伴う退職金、不採算事業の整理など)を賄うための原資としての役割も期待されます。安く買った分、その後のPMIで抜本的な改革を断行し、企業価値を回復させることが最終的な目標となります。

注意点

「安物買いの銭失い」のリスク

特別利益の計上に目を奪われ、買収後に顕在化するリスクやコストを過小評価してしまうと危険です。負ののれんが発生する背景には、必ず相応の理由があります。
デューデリジェンス(DD)でリスクを徹底的に洗い出し、買収後の再生計画が現実的かどうかの見極めが重要です。

PPA(取得原価の配分)での慎重な検討

安易に「負ののれん」として特別利益に計上する前に、PPAのプロセスで、対象企業の保有資産(在庫、固定資産など)の評価が甘くないか、減損すべき資産はないかを慎重に検討する必要があります。本来は資産の評価減として処理すべきものを、負ののれんとして利益計上してしまうと、将来の損失を先送りすることになりかねません。

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