ティン・パラシュート (てぃん・ぱらしゅーと)
敵対的買収に対する防衛策の一つで、買収に伴い「一般従業員」が解雇や降格をされた場合に、会社が巨額の退職金や割増退職金を支払うようあらかじめ規定しておく手法です。経営陣を対象とする「ゴールデン・パラシュート」、中間管理職向けの「シルバー・パラシュート」に対し、一般従業員を守る制度であることから「ティン(ブリキ)」と呼ばれます。
英語表記
Tin Parachute
役割・実務での使われ方
「買収コストの引き上げ」と「従業員保護」の両立
敵対的買収者に対して、「買収を強行し、その後に人員削減(リストラ)などの合理化を図ろうとすれば、莫大な退職金支払いが発生する」という財務的なプレッシャーを与え、買収意欲を削ぐ役割を果たします。また、買収防衛という目的に留まらず、予期せぬ買収劇による従業員の動揺や雇用不安を和らげ、通常業務の停滞や優秀な人材の流出を防ぐという、実務上極めて重要な「従業員保護」の役割も担っています。
一般的な使われ方(福利厚生・リテンション施策として)
純粋な敵対的買収の防衛策としてだけでなく、スタートアップやベンチャー企業において、将来M&Aで会社が売却された際にも従業員の雇用や待遇が守られることを約束する「リテンション施策」や「福利厚生」の一環として、類似の規定を設けるケースもあります。
注意点
単体での「防衛効果」は限定的
経営陣向けのゴールデン・パラシュートに比べると一人あたりの支給額は小さいため、資金力が豊富な巨大企業やファンドが買収者である場合、決定的な買収阻止(防衛)効果には繋がりにくいという側面があります。実務上は、他の買収防衛策(ポイズンピルやスタッガード・ボードなど)と組み合わせて使われる補助的な位置づけとなります。
既存株主の理解と「モラルハザード」の懸念
従業員保護という大義名分があるものの、あまりに過剰な割増退職金を設定すると「会社の資産(本来は株主の利益となるべきもの)を不当に流出させている」として、既存株主や投資家からの厳しい批判を招くリスクがあります。企業規模や業績に見合った、合理的な金額設定が不可欠です。
平時からの制度化が必要
他の防衛策と同様に、敵対的買収を仕掛けられてから慌てて退職金規程を改定しようとすると、経営陣の保身に向けた不当な工作と見なされるリスクが高まります。
平時からの就業規則や退職金規程の見直しの中で、透明性を持って整備しておく必要があります。