用語集

Glossary

人的承継 (じんてきしょうけい)

事業承継で経営者・幹部・技術者など“人”が持つ知見や取引関係、企業文化を次世代へ引き継ぐことです。株式や不動産を移す物的承継と対になる概念です。
M&Aでは、キーパーソンの継続就任、雇用条件や引継ぎ期間の合意、守秘・競業避止、インセンティブ(ロックアップストックオプション)の設計、PMIでのOJT/マニュアル化を通じ、暗黙知の移転と顧客離反の防止を図ります。中小企業の価値維持に直結する重要テーマです。

役割・実務での使われ方

キーパーソンの引き留め(リテンション)策の設計

買収後も重要な人材に一定期間残ってもらうため、M&Aの条件交渉の段階で、役員報酬などの雇用条件のすり合わせや「最低〇年間は勤務を継続する」というロックアップ条項ストックオプションなどのインセンティブ制度を設計します。

企業価値評価(デューデリジェンス)でのリスク洗い出し

買い手企業は、「売上の大部分が社長個人の人脈によるものではないか」「特定の技術者が辞めたら製品が作れなくなるのではないか」といった属人化のリスクを厳しくチェックします。組織的な営業・生産体制が構築されているほど、M&Aでの評価(価格)は高くなりやすい傾向があります。

PMIにおける「暗黙知の形式知化」と顧客離反防止

M&A成立後(PMI)は、前経営者やベテラン社員と引継ぎ期間を設け、同行営業や業務プロセスのマニュアル化を通じて個人の暗黙知(感覚的なノウハウ)を組織の形式知へと変換し、顧客離れを防ぎます。

注意点

「物的承継」よりも圧倒的に時間がかかる

株式や資産の譲渡(物的承継)は契約と決済により一瞬で完了しますが、人の心や目に見えないノウハウの引き継ぎ(人的承継)には、数ヶ月から数年単位の長い時間と労力がかかります。

キーマンの退職・独立(競業)リスク

引継ぎが完了する前にキーマンが退職してしまったり、同業他社に転職・独立されてしまったりすると、企業価値が大きく毀損します。
これを防ぐため、株式譲渡契約などで「退職後〇年間は同じ地域で同業種を行わない」といった競業避止義務を定めることが不可欠です。

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