基本合意 (きほんごうい)
M&Aおいて、売り手・買い手が主要条件を確認・合意したことを示すため、作成した基本合意書に締結をおこなうプロセスです。
交渉内容を整理し、デューデリジェンス(DD)~最終契約書(DA)への移行を円滑にします。
英語表記
Basic Agreement / Memorandum of Understanding (MOU) / Letter of Intent (LOI)
役割・実務での使われ方
買い手にとっての「独占交渉権」の確保
実務上、基本合意の最も重要な役割の一つが、買い手に独占交渉権を付与することです。買い手は、次のステップであるデューデリジェンス(DD)で弁護士や公認会計士に多額の費用を支払って調査を行います。もし調査中に売り手が他の候補企業と契約を結んでしまえば、買い手は大きな損害を被るため、一定期間(通常3〜6ヶ月程度)は他社との交渉を禁止する権利を確保します。
売り手の「心理的なコミットメント」と安心感の醸成
売り手(オーナー経営者)にとっても、基本合意は大きな意味を持ちます。買い手が正式に書面で買収の意思と暫定価格を示してくれることで「この条件で進めても良い」という心理的な安心感が生まれ、機密性の高い内部情報を開示する(DDを受け入れる)決断の後押しとなります。
スケジュールとスキームの目線合わせ
最終契約(クロージング)までのスケジュール感や、どのような手法(株式譲渡なのか、事業譲渡なのか等)で進めるのかをこの段階で明文化します。
これにより、後になって「そんな話は聞いていない」「想定と違う」といった根本的な認識のズレが生じるのを防ぎます。
注意点
法的拘束力の有無の明確化
基本合意書に記載される「買収価格」や「スキーム」は、あくまでDD前の暫定的なものであるため、一般的に法的拘束力を持たせません。
一方で、独占交渉権や秘密保持義務には法的拘束力を持たせるのが実務の鉄則です。
この「拘束力がある条項」と「ない条項」を契約書内で明確に切り分けておく必要があります。
DD後の価格変動(減額)リスク
売り手は、基本合意に記載された金額で必ず売れると安心しがちですが、DDで簿外債務や法務リスクが見つかった場合、最終契約に向けて買収価格が引き下げられるケースが多々あります。暫定価格はあくまで「上限」または「目安」であるという認識を持っておくことが重要です。
「ゴールではない」という認識
基本合意はあくまで中間地点であり、成約を確約するものではありません。
DDの結果次第では交渉が破談になることも十分にあり得るため、最終契約が完了するまで気を緩めない経営の舵取りが求められます。