用語集

Glossary

累進税率 (るいしんぜいりつ)

所得(利益)や財産などの金額が大きくなるほど、段階的に高い税率が適用される仕組みのことです。
M&A実務において、この仕組みは「どの手法で会社を売却するか」という決断に直結します。

英語表記

Progressive Tax Rate

役割・実務での使われ方

手取り額を最大化する「最適なM&Aスキーム」の選定基準

M&Aを実行する際、オーナー経営者の手元に最終的にいくら残るか(税引後手取額)をシミュレーションするための最も重要な判断基準となります。
例えば、会社を売却する際に「株式譲渡」を選べば約20%の固定税率(分離課税)で済みますが、個人事業主が「事業譲渡」を行うと所得が合算され、最高約55%の累進税率の対象となるため、税負担に天と地ほどの差が生まれます。

「株式譲渡」と「役員退職金」のベストバランスの算出

M&Aの際、オーナーが自社から多額の「役員退職金」を受け取るケースがよくあります。退職金には税制上の優遇措置(退職所得控除や1/2課税)がありますが、それでも金額が大きくなれば累進税率によって高い税率が適用されます。そのため、一定税率である株式売却益(約20%)と退職金をどのような割合で受け取るのが最も税負担が少なくなるかを計算する際の、重要なパラメーターとなります。

「みなし配当」による想定外の課税リスクの回避

組織再編や、売り手企業がオーナーから株式を直接買い取る(自己株式の取得)スキームを実行した際、対価の一部が税務上「みなし配当と判定されることがあります。非上場企業の配当所得は原則として総合課税となり、最高税率約55%の累進税率が適用されるため、スキーム構築時に最も警戒すべき(回避すべき)税務上の指標として機能します。

注意点

表面上の「譲渡金額」だけで判断しないこと

M&Aの交渉において、買い手から高い譲渡金額(表面上の価格)を提示されたとしても、スキームによっては累進税率が適用され、税引き後の手残り額が大幅に目減りしてしまう可能性があります。常に「税引き後に手元にいくら残るか」を基準に判断することが重要です。

毎年変わる「税制改正」への対応

税率の区分や最高税率、控除の仕組みなどは、毎年の税制改正によって変動する可能性があります。
インターネット上の古い情報を鵜呑みにせず、最新の税制に基づいた計算が必要です。

専門家による精緻なシミュレーションの必須性

累進税率が絡む税務計算(特に退職金や組織再編が伴う場合)は極めて複雑です。M&Aの基本合意を結ぶ前の早い段階で、M&Aに精通した税理士や公認会計士に相談し、複数のスキームで税引き後手取額のシミュレーションを出してもらうことが不可欠です。

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