用語集

Glossary

分離課税 (ぶんりかぜい)

ある所得(利益)を給与などの他の所得と合算せず、単独で切り離して税金を計算する制度のことです。
通常、個人の所得はすべて合算され、利益が大きくなるほど税率も高くなる「総合課税(最大約55%)」が適用されます。しかし、株式や不動産の売却で得た利益には、特例としてこの「分離課税」が適用されます。M&A実務における最大のポイントは、中小企業を株式譲渡で売却した場合にこの分離課税が適用される点です。
会社の売却によって数億円という莫大な利益が出たとしても、他の所得とは切り離され、一律「20.315%」という低い税率で計算されます。
売り手(オーナー経営者)の手元に残る現金(手取り額)を最大化できるため、M&Aにおいて事業譲渡などよりも株式譲渡が選ばれやすい最大の理由となっています。

英語表記

Separate Taxation

役割・実務での使われ方

M&Aスキーム(手法)を決定する最大の判断基準

会社を売却する際、「株式譲渡」を選ぶか「事業譲渡」を選ぶかを決める上で、この分離課税の仕組みが決定打となります。事業譲渡によって個人の手元に資金を移そうとすると、法人税等(約30%)の後に個人の総合課税(最大約55%)がかかる「二重課税」のリスクが生じますが、株式譲渡であれば分離課税(一律約20%)のみで済むためです。

創業者利益(手取り額)の最大化シミュレーション

オーナー経営者がM&Aによるハッピーリタイアエグジット(投資回収)を検討する際、「税金を引かれた後、個人の通帳にいくら現金が残るのか」を計算するための大前提となるルールです。利益が数億円規模になっても税率が跳ね上がらないため、経営者にとってM&Aの大きなモチベーションとなります。

エグジット時のタックスプランニング(税務戦略)

M&Aの対価をすべて株式譲渡(分離課税)として受け取るか、同じく税務上の優遇措置がある役員退職金(退職所得)と組み合わせて受け取るかを比較・検討し、売り手全体の手取り額を最大化するための戦略策定のベースとして活用されます。

注意点

「申告分離課税」のため自ら確定申告が必須

給与から自動的に税金が引かれる源泉徴収とは異なり、非上場株式のM&Aによる利益は原則として「申告分離課税」となります。
会社を売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に、経営者個人が自ら税務署へ確定申告を行い、納税を済ませる必要がある点に注意が必要です。

「事業譲渡」には適用されない(混同に注意)

分離課税のメリットを享受できるのは、あくまで個人が保有する「株式」を売却した時です。
会社が「事業(資産)」の一部または全部を売却する事業譲渡スキームでは、この分離課税の恩恵は受けられません。

税制改正の動向に留意する

現在は復興特別所得税を含めて「20.315%」となっていますが、過去には税率が10%に軽減されていた時期もあるなど、分離課税の税率は国の税制改正によって変動する可能性があります。M&Aの実行時期によっては、最新の税制を専門家に確認することが不可欠です。

極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(ミニマムタックス)

通常の方法で計算した所得税額とは別に「最低限これだけは負担すべき」とされる税額を計算し、その額が通常の所得税額を上回る場合に差額を追加で納める仕組みで、令和7年の所得から導入されている追加税制になりますが、令和8年度の税制改正により令和9年の所得から大幅に強化されているので譲渡所得が多額になる場合には注意が必要です。

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