パーチェス法 (ばーちぇすほう)
M&A(企業結合)を行った際の会計処理ルールのひとつで、対象企業の資産や負債を「買収した時点の時価(現在の価値)」で評価し直して引き継ぐ方法です。
この方法の最大の特徴は、「のれん」が発生する点です。対象企業の純資産を時価評価した額よりも、実際の買収価格(支払ったお金)が高かった場合、その差額分はブランド力や顧客基盤といった目に見えない価値とみなされ、「のれん」として会計上記録されます。
英語表記
Purchase Method
役割・実務での使われ方
買収プレミアム(のれん)の可視化と会計上の記録
M&Aにおいて、買い手は対象企業の純資産額(時価)だけでなく、将来の収益力やブランド力に対して「プレミアム(上乗せ額)」を支払って買収するのが一般的です。パーチェス法を適用することで、この目に見えないプレミアム部分が「のれん」という勘定科目として貸借対照表(バランスシート)上に正確に記録・可視化され、買収の実態を財務諸表に正しく反映させる役割を果たします。
PPA(取得原価の配分)を通じた「隠れた無形資産」の特定
パーチェス法の実務においては、対象企業の資産・負債を時価評価する「PPA(取得原価の配分)」というプロセスが必須となります。
これにより、対象企業の帳簿には載っていなかった「顧客リスト」「特許権・商標権」「独自技術」などの価値ある無形資産が新たに特定され、買収によって具体的にどのような経営資源を獲得したのかを会計上明確にする機能を持ちます。
買収後の「将来の利益(PL)」への影響シミュレーション
日本の会計基準(J-GAAP)では、パーチェス法によって計上された「のれん」や、新たに認識された無形資産)、買収後の数年〜最長20年にわたって少しずつ費用として計上(償却)していく必要があります。そのため、M&A検討時のバリュエーション(企業価値評価)段階において、買収後に発生する償却費が毎年の営業利益をどれくらい圧迫するかを試算するための前提条件となります。
注意点
時価評価(PPA)に伴う「多大なコストと専門性」の負担
資産や負債をすべて時価で評価し直す手続きは極めて複雑です。特に不動産や無形資産の評価には、外部の第三者評価機関(監査法人、不動産鑑定士、バリュエーション専門ファームなど)への依頼が不可欠となるケースが多く、多額の専門家費用と数ヶ月単位の時間がかかる点に留意が必要です。
「のれん償却」による買収後の業績(利益)悪化リスク
日本の会計基準を適用している場合、買収金額が高ければ高いほど、多額の「のれん」が発生し、その後の毎年の償却費(費用)が大きくなります。
対象企業の実際の生み出すキャッシュフローが償却費を下回ってしまうと、会計上は赤字(利益の圧迫)となってしまうため、のれん償却費を加味した上での慎重な買収価格の決定が求められます。
「負ののれん」が発生した場合の特例処理
業績不振企業の救済M&Aなどで、対象企業の純資産(時価)よりも安い価格で買収できた場合、差額は「負ののれん」となります。日本の会計基準では、この負ののれんは発生した事業年度に「特別利益(一括して利益)」として計上されるルールとなっており、通常ののれんとは全く異なる会計処理となる点に注意が必要です。