労働契約承継法 (ろうどうけいやくしょうけいほう)
M&Aや組織再編によって、会社や事業の経営主体(オーナー)が変わった際に、そこで働く従業員の雇用と権利を守るための法律です(正式名:労働契約の承継に関する法律)。会社の所有者や運営者が変わっても、従業員の雇用条件や労働契約は原則として引き継がれ、一方的に解約・変更できないという労働者保護が基本となっています。労働契約は従業員の権利であり、買い手企業は従業員の雇用形態や待遇、退職金規程などを現状維持したまま承継する義務があります。
例外的に労使協議や労働契約の変更が可能な場合もありますが、その際には労働者側の同意が必要です。
役割・実務での使われ方
実務では主に以下の3つのポイントで機能します。
雇用の保護と包括承継
法人が変わっても、従業員が結んでいる労働契約の内容(給与、労働時間、勤務地、退職金規程などの待遇)は、原則としてそのまま承継企業に引き継がれます(包括承継)。法人が変わったからといって、一方的に解雇したり、給与を下げたりといった不利益な変更はできません。
適用される場面(組織再編)
主に「会社分割(吸収分割・新設分割)」など、事業の実体が他社に移転する場面で適用されます。
買い手企業は、対象となる従業員の雇用形態や待遇を現状維持したまま承継する義務を負います。
M&Aプロセスでの実務対応
M&Aの現場では、この法律を遵守するために以下の対応が求められます。
現状確認 : デューデリジェンスで対象従業員の契約書や就業規則を確認する。
労使協議 : 労働組合や従業員代表と誠実に話し合う。
合意の明文化 : 承継内容や、合意の上での変更事項を書面に残す。
注意点
例外的な変更には「同意」が必要
原則は現状維持ですが、統合後の業務効率化などで労働条件を変える必要がある場合は、必ず労使協議を行い、労働者側の個別の同意を得る必要があります。
事業譲渡との違い
厳密にはこの法律は会社分割を対象としています。事業譲渡の場合は、法律上の「当然承継(自動的な引き継ぎ)」ではなく、従業員一人ひとりとの「再契約(同意)」が必要となるため、手続きが異なりますが、従業員保護の精神は同様に重視されます。