株式移転 (かぶしきいてん)
既存会社が自社株式のすべてを新設の持株会社に移し、その新会社を完全親会社とする組織再編手法です。
単独(1社でホールディングス化)と共同(複数社で共同持株会社を設立)の2類型があり、経営統合やグループ経営の効率化に用います。
親会社を新設する点が、既存の親会社が株式を交換して子会社化する株式交換と異なります。
新株交付を対価とするため資金負担を抑えやすく、意思決定の迅速化や完全子会社化の容易さが利点ですが、手続は複雑で株主構成の変化にも配慮が必要です。
役割・実務での使われ方
実務においては、単なるグループ化の手段としてだけでなく、経営戦略や事業承継の重要なツールとして活用されています。
「対等な立場」での経営統合(共同株式移転)
M&Aにおいて、A社がB社を子会社化する株式交換では、どうしても「親・子」の上下関係が生まれてしまいます。
一方、株式移転を用いて両社の上に新しい親会社を設立し、両社がその並列の子会社となる形をとれば、「対等な立場での統合」というメッセージを内外に示すことができます。業界再編型の大型統合などでよく見られる手法です。
事業承継と経営の効率化(単独株式移転によるHD化)
オーナー企業が事業承継を行う際、持株会社体制へ移行するために利用されます。
事業を行う事業会社と、グループ全体の戦略や資産管理を担う持株会社を分けることで、「経営と執行の分離」を進め、後継者がグループ経営に集中できる体制を構築します。また、将来的な相続を見据え、持株会社の株式評価を引き下げる(株価対策)効果が期待できるケースもあります。
注意点
手続きが複雑で時間がかかる
新会社を設立するため、定款作成や設立登記などの手続きが必要です。
また、原則として株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要であり、債権者保護手続きは不要な場合が多いものの、株券提出公告など、完了までに最低でも2〜3ヶ月程度の期間を要します。
株主構成は変わらない(スクイーズアウトには不向き)
既存会社の株主は、保有していた株式と引き換えに、そのまま新設親会社の株式を受け取ります。
つまり、既存会社の株主構成がそのまま新設親会社にスライドするため、特定の少数株主を排除(スクイーズアウト)する目的には適していません。
上場企業の場合の審査
上場企業が株式移転で持株会社化する場合、既存の上場会社は上場廃止となり、代わりに新設される持株会社が新規上場することになります。
この際、証券取引所による実質的な上場審査が必要となります。