競争激しい葬儀業界で生き残る
多角化M&Aでノウハウを学び、グループ全体で共有する
SOUホールディングス株式会社
代表取締役 松丸 喜樹(まつまる よしき)氏
葬儀会社から始まり、介護、保育など、ライフサイクルにかかわる事業を展開するSOUグループ。葬儀業界でも他社に先駆けてM&Aを活用し、会社を発展させてきた同グループは、培ってきた介護や保育のノウハウを携え、海外へも進出。グローバルな展開によってより強いグループへと成長させている。
M&Aの先駆け
1915年、千葉で産声を上げたSOUセレモニー(創業時は亥鼻葬儀社)を始まりとするSOUホールディングス。現在は、葬儀業だけでなく、介護、保育など26社のグループ企業を擁し、多角的に展開している。
「グループの中核をなすSOUセレモニーには、108年の長い歴史がありますが、実は、葬儀社を経営していた私の父が、後継者がいなかった旧亥鼻葬儀社(当時の博全社)をM&Aによって引継ぎ、つないできたという歴史があります」
同グループを牽引する松丸喜樹氏は、その歴史についてこう語る。そんな同グループが、松丸氏の代になり、経営戦略としてM&Aを積極的に活用する背景には、葬儀の簡略化による低価格化と、他業界からの新規参入が増え、競争が激化したことがある。
超高齢社会が到来した現在、日本の年間死亡者数は増え続けている。
「死亡者数の増加のピークは2040年頃だと言われています。バブル崩壊やリーマンショックなどで経営環境が厳しくなっていた他業界からすると、葬儀の数が増えると想定される葬儀業界は『成長産業』として捉えられたのです」
だが、近年では子どもや孫だけの近親者のみで執り行う家族葬や、通夜や葬儀をせず亡くなった場所から直接火葬場に移動する「直葬」など、新しい形態が生まれ、葬儀費用の低価格志向が強まっている。
「市場規模が伸び悩み始めたところに新規参入が増え、競争は激化していきました。そんな状況で会社を守っていくためには、同業他社と業務提携を行い、業界の中でリーダーシップを発揮していかなければならないだろうと、M&Aによる事業拡大の道を模索し始めたのです」
さらに、15年に100周年を迎える際に行った社史の編纂も、松丸氏がM&Aを行おうと考えたきっかけになった。
「社史の編纂のため、改めて会社の歴史を振り返ってみると、父がM&Aによって博全社を引継いだことに始まり、後継者がいない霊園を引き受けるなど、会社の事業領域を広げてきた背景にM&Aがあったことに気付かされたのです」
可能性を広げた異業種M&A
松丸氏が最初にM&Aをしたのは、意外にも葬儀業とは縁のない、飲食関連のフランチャイズを展開する会社と人材派遣会社だった。「最初は同業をと考えていましたが、なかなかいい会社に巡り合えませんでした。そんな中、葬儀事業を他地域に多店舗展開することを考えたら、品質を保ったまま展開するには、フランチャイズのノウハウがあるといいだろうと思い至ったのです」
こうして、ローコストオペレーションで多店舗展開をしているフランチャイズの運営会社をM&A。また、人材不足による採用難を見越し、フレキシブルな働き方について勉強したいと人材派遣会社を見つけ、M&Aを行った。
「葬儀業界以外の会社を最初にM&Aしたことで、思っていた以上に幅広い知見を得ることができました。M&Aをうまく活用すれば、より会社を強くできると気が付いたのです」
さらに、近年の低価格志向を考えると、葬儀市場が今以上に伸びる可能性は低いと思われた。葬儀事業以外の、複数の柱をつくる必要性を感じたのだ。松丸氏は、葬儀事業と顧客の連動性がある介護事業のM&Aを決めた。
「また、会社の今後の方針として、ライフタイムバリュー※の拡大を考え、働く親をサポートする保育事業への参入を考えるようになりました。まずは葬儀業とシナジーを生み出しやすい介護事業について、M&A先を紹介してもらうことになったのです」
※ ライフタイムバリュー:顧客生涯価値。顧客がサービスを利用開始してから関係が終了するまでにトータルで得られる利益のこと。
傍観者にはメリットの実感を
一般的に、M&A後、従業員の反発にどう対応していくかが悩ましい問題として挙げられる。しかし、松丸氏は「むしろ反応のない従業員のほうが難しい」と語る。
「危機感を感じ、最初からいろいろと言ってくる人たちと相対するのは大変です。でも、そういう人たちは自分の意見を持っており、議論ができる。意見を交わし合うことで、会社を良くしていくためのベクトルを合わせることができます。でも、何も言わずこちらの出方をただ見ているだけという人もいて、彼らを動かすほうが、実は難しいのです」
そうした「傍観者」の従業員たちは、会社がそれまでよりも利益を出し、給与が上がって初めて動いてくれるようになることが多いという。
「ですから、スケールメリットを活用したコスト削減やバックオフィスの統一、ノウハウの共有、単価アップなどさまざまな施策を行い、早急に利益を上げて結果を出すことが重要です。給与が上がれば『会社がM&Aをしてよかった』と実感できますし、『給与が上がったのだから頑張ろう』と思えるのです」
複数の企業をM&Aしてきた同グループだが、そのメリットについて、松丸氏はこう語る。
「互いの良いところを共有し合えれば、お互いがより良い会社になれるだろうと考えていました」
ところが、最初のうちはそううまくはいかなかった。M&Aをした会社の従業員たちは、自社のどこが「良いところ」なのか、何が独自のノウハウなのかが把握できていなかったのだ。そのため、「うちはこうやっていますがどうですか」とこちらのやり方を呼び水として与えながら、少しずつそれぞれの会社が持つ独自のノウハウを引き出していった。
「今では、そうして引き出したノウハウや、互いの会社の良いところを相互に受入れ、グループ全体がどんどん進化しています。それがM&Aにおける大きな価値だと思うのです」
23年8月、障がい者支援事業を千葉県内で展開する企業がグループインした。葬儀、介護、保育、そして障がい者支援も併せて、人に寄り添う事業を中心に展開していく。
現在、SOU グループは26社で構成されている。今後も葬儀事業を中心に、介護、保育、そして海外展開も含め、柔軟に事業範囲を広げ、活躍の場を広げていくことだろう。
Company Profile
- 会社名:SOUホールディングス株式会社
- 所在地:千葉県千葉市美浜区新港32-1(グループ本部)
- TEL:043-244-7860
- 設立:1999年(創業 1915年)
- 資本金:1000万円
- 従業員数:4222名(グループ全体、2023年10月1日現在)
- https://www.souholdings.co.jp
※本記事は、当社発行の月刊誌『月刊ビジネスサミット(現:『月刊次世代経営者』)』2024年1月号の記事をもとに、Web用に一部加筆・修正しています。記事の内容は執筆当時の情報に基づきます。