エンジニア業界のトップティアが目指すもの
ロールアップ戦略で事業を拡充する
ITエンジニアと企業をつなぐマッチング事業を軸に会社を拡大し続けているTWOSTONE&Sons。13年に誕生した同社は、成長戦略の一つにM&Aを置き、エンジニア領域だけでなくコンサル領域を視野に入れた戦略的M&Aを実行。これまでに14件のM&Aを行い、会社を飛躍的に成長させてきた。同社の河端保志CEOに、M&A戦略について話をきいた。
Profile
株式会社TWOSTONE&Sons
代表取締役CEO 河端 保志(かわばた やすゆき)氏
1989年生まれ。埼玉県出身。電気通信大学大学院在学中に、「エンジニアの価値向上」を目指してBranding Engineer(旧社名)を創業、代表取締役CEOに就任。会社の先頭に立ち、自ら新規事業の立案や企業との提携などを行い、会社の成長をけん引。2020年7月に東証マザーズ上場を達成。23年6月にホールディングス体制に移行し、社名をTWOSTONE&Sonsに変更。
M&Aによって飛躍的に成長
TWOSTONE&Sons は、2013年、河端保志CEOと共同代表である高原克弥COOが共に学生時代に立ち上げた、フリーランスのITエンジニア支援を軸とするホールディングスだ。ITエンジニアプラットフォームを中心に開発支援や受託事業など、企業のシステムサービス発展に貢献する事業を展開するBranding Engineer社を筆頭に複数の子会社を擁し、近年ではM&Aコンサルティングおよび戦略・ITコンサルティングサービスの提供も開始している。
そんな同社は、20年、東証マザーズ(現東証グロース市場)に上場。21年に上場後初のM&Aを手掛け、以来その数は14件にのぼる。既存事業の継続的な成長と、M&Aによる非連続的な成長を組み合わせ、21年に42億8300万円だった売り上げは、25年には180億7700万円と、急速に成長を加速させている。

2013年の創業以来12 期連続増収を実現している
出所:2025年8月期 通期決算説明資料(事業計画及び成長可能性に関する事項)より編集部にて編集
また、23年にはホールディングス体制に移行すると同時に、社名をBranding Engineer からTWOSTONE&Sons に変更。ホールディングス化によって、グループ経営の機動性・柔軟性を高め、迅速な経営判断を可能とする体制を整えている。
ロールアップ戦略で成長

同グループでは、ロールアップを駆使した、戦略的M&A を実行している
出所:2025年8月期 通期決算説明資料(事業計画及び成長可能性に関する事項)より抜粋
「今、私たちがM&Aを積極的に行っているのは、中核事業の一つであるエンジニアマッチングサービス(以後、エンジニア事業)の領域と、上流コンサルの領域です。ここでいう上流コンサルとは、クライアントが抱える経営課題の解決や立案を行うもので、解決手段となるシステムの設計等を行う場合もあります。当グループでは、この2つの領域に関して、〝ロールアップ戦略〟をとっています」
ロールアップ戦略とは、同じような業種業態の企業を短期間で複数社買収・統合し、飛躍的な成長を目指すものだ。この戦略をとるにあたり、河端氏は「人材業界は規模が大きいほどお客様にも自社にもメリットが出る」との考えを示す。
「新卒採用サービスなどの例を見ても、人材業界に関しては、知名度が高くブランド力があるサービスほどユーザーを獲得しやすい傾向があります。これは、当グループの中核となるフリーランスのITエンジニアに特化したサービスや、上流コンサルに関しても同様です」
一つの会社で社員として働く場合とは違い、複数の専門エージェントに登録することが当たり前のフリーランスエンジニアの世界では、知名度が高いエージェントには、とりあえずでも登録しようと考える。そのエージェントが口コミでよい評価を得ていれば尚更だろう。
そのため、知名度が高いエージェントであるほど、高い技術を持つエンジニアが集まりやすく、優秀なエンジニアを求めている企業からのオーダーも自然と集まってくる。多くの企業からオーダーが来れば、正当な評価で高い報酬が支払われる「よい案件」も多くなるため、必然的によい人材が登録する好循環が生まれる。
エンジニア領域でそうした好循環を生み出し、上流コンサルと共に業界で頭ひとつ抜き出た存在になることで、エンジニアと、エンジニアを必要としている企業に対し、よりよいサービスを提供する考えだ。
エンジニア業界に存在する不当な請負構造を払拭
また、同社がM&Aを推進する別の理由として、河端氏は、エンジニア事業を展開する業界に生じている問題点を少しでも解決に導くためだと言及する。
「以前から言われていることですが、エンジニア業界には、いまだに多重請負構造が存在します」
規模の小さなエンジニア企業の場合、請け負った仕事に対し、エンジニアの数が足りない事態に陥ることもある。そんな時は、別の企業からエンジニアを提供してもらう〝多重請負〟が発生する。開発リソースが不足する企業同士でエンジニアを相互に融通し合い、協力してプロジェクトを遂行するために必要な場合もある。だが、大きなプロジェクトになると2次請け、3次請けと、複数の企業が間に入る場合もあり、下請け企業との間で手数料を取るだけの会社も存在するという。
「現在は少なくなりつつありますが、単に手数料を上乗せするだけの会社がないわけではありません。そんなふうに顧客にもエンジニアにもバリューが提供できていない会社を減らし、意味のない多重請負を減らしていくことも、当社でM&Aを積極的に推進していく理由の一つとなっています」
今、エンジニア業界は成熟に向かっていると河端氏は語る。これまでは参入障壁が低く、さまざまな会社が生まれてきたが、近年ではそれが淘汰され、統合されつつある。
「私たちがM&Aをすることで、その動きは少しですが早まっているはずです。それは、働き手であるエンジニアにとっても、オーダーする企業にとってもいいことだと思います」
玉石混交だったエンジニア企業が統合され、信頼できる会社が増えていく。同社はその一翼を担おうと考えているのだ。
成長意欲がある若手に活躍の場を提供
上場来25年9月までに計14件のM&Aを行ってきた同社だが、前述のように、登録エンジニアにとって、登録している会社がM&Aされるメリットは大きい。では、登録エンジニア以外の社員はどうだろうか。
「M&Aをした会社では、当社のように、初めから上昇志向の高い社員が多いわけではなく、のんびりやりたいという人は辞めていく場合もあります。でも、そういう人はそれほど多くなく、『これを機に頑張ってみたい』と言ってくれる人がかなりの割合でいます。そういう人たちにとっては、M&Aがよい転機になっているようです」
また、同社がM&Aを行う目的の一つに、成長意欲がある若手が活躍できる場を提供するというものがある。創業以来著しい成長を遂げ、7年目で上場した同社には、成長意欲が高い人材が活躍の場を求めて入社してくる。
「彼らを見ていると、『どの会社に入るか』を重視するよりも、『そこで何ができるか』が重要だと考える人が増えてきていると感じます」
成長意欲の高い人ほど、自分が働く会社を選ぶ際に〝裁量権の大きさ〟を尺度の一つにする傾向があるという。
「能力のある人材にはその能力を発揮できるチャンスを提供することが組織として大切だと考えています」
実際、同社では意欲ある若手が入社数年で子会社の社長に就任した例もあり、若手が裁量権を持って働ける環境を整えているという。
ただ、そうしたときに気をつけなければならない点もあると河端氏は語る。
「どんなに意欲が高くても、思っていたことと現実が違う場合はたくさんあります。意欲の高い人ほど、そうした壁を乗り越えることに苦労することがあるのです」
頑張る人ほど、思ったようにいかなかったとき、〝折れて〟しまう。そうならないように、小さな成功体験を早めにつくり、経営者としての自信と実力を身につけられるようロードマップをつくっている。
会社の収益増はエンジニアの幸せにつながる
「今後は、企業に必要なソリューションをなんでも提供できるBtoBのデパートメントになりたいと考えています」
ITを活用した事業計画策定のサポートから、IT人材の提供まで、顧客の売り上げを最大化させていくために必要な要素をすべて持ち、あらゆる要望に常に応えられるグループへと成長させていく考えだ。
河端氏は、「会社は成長させるべきもの」という信念を持っていると語る。

出所:2025年8月期 通期決算説明資料(事業計画及び成長可能性に関する事項)より抜粋
(2025年8月31日時点)
「私自身がエンジニアとして働いていたこともあり、起業当初は、日本のエンジニアが抱えるさまざまな理不尽を実感し、なんとか変えたいと考えていました。そもそもの起業のきっかけも、アメリカのシリコンバレーに行った際、フリーランスのエンジニアの立場が日本と全く違うことに衝撃を受け、日本のエンジニアが正当に評価されることを目指そうと思ったからです。でも、経営をしていくなかで、発注者がいて私たちのサービスに対価を払ってくれているからこそ、従業員の給与を支払うことができるということも実感しました。エンジニアを幸せにするためには、その橋渡しをする当社もまた収益を出し続けることが必要だと気がついたのです」
同社が、ITに関するサービスを提供することで取引先企業が成長し、より収益を得るようになれば、エンジニアにもより高い報酬を支払える。そのためにも自社の成長とM&Aによるシナジー効果を組み合わせ、飛躍的な事業の成長をこれまで以上に実現させていく。
Company Profile
- 会社名:株式会社TWOSTONE&Sons
※2023年に株式会社Branding Engineer より名称変更 - 所在地:東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル6F
- 設立:2013年
- 資本金:10億3898万5000円(2025年8月31日時点)
- 従業員数:750名(連結従業員数2025年8月31日時点)
- https://twostone-s.com/
※本記事は、当社発行の月刊誌『月刊次世代経営者』2025年12月号の記事をもとに、Web用に一部加筆・修正しています。記事の内容は執筆当時の情報に基づきます。