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M&A戦略インタビュー

業界4位の拡大戦略
先頭集団に立ちリフォームの価値を高める

株式会社アートリフォーム
代表取締役社長 大本 哲也(おおもと てつや)氏

大本 哲也氏

1952年、神戸で大本畳敷物店として開業したアートリフォーム。
2008年に会社を引継いだ三代目・大本哲也社長は、約15年ほどで年間売上を12億円から83億円へと拡大。同社を総合リフォーム店売り上げ4位※にまで成長させ『日本中小企業大賞2023』ベストプランニング賞事業成長率部門ノミネート賞を受賞。リフォーム業界を牽引すべく躍進している。

※ リフォーム産業新聞業種別売上ランキング2023より

使命感を感じた事業承継

アートリフォームは、網戸1枚の張り替えから、内装すべてを変更するリノベーションの提案、設計、施工管理まで行っているリフォーム会社だ。2017年からはM&Aを成長戦略として積極的に取り入れ、現在はグループ全体で従業員約400名、年間1万件のリフォームを受注。売り上げ約110億円を誇る。

同社の三代目にあたる大本哲也社長は、08年、先代の急逝により、急遽社長に就任した。
「実は、父が急逝する前年に私自身が同業を起業したばかりで、会社を継ぐつもりはありませんでした。会社には父を支えてくれていた優秀な幹部陣がいましたから、その中から次の社長を選ぶのだと思っていたのです」
ところが、先代の急逝を受けて行った経営会議で、幹部陣から社長就任を打診された。
「これまで社長とナンバー2、ナンバー3のトライアングルで会社を経営してきていて、その関係性を崩したくない。『大本の後は大本で引継いでほしい』と言われたのです。その言葉を聞き、『私は自分のことしか考えてこなかった』とハッとさせられました。それで、彼らの気持ちにきちんと応えたいと思ったのです」

こうしてアートリフォームの社長になった大本氏は、同社が、想像していた以上に多くの魅力を持っていることに気づく。成長著しいリフォーム業界にあって業績は良く、成長意欲の高い従業員がいる。会社の雰囲気も良く、自由でありながら、目標を見据えて活動ができていた。
「この会社が大きくなり、多くのお客様にサービスを提供していくことで、リフォームを通じて大勢の人に“豊かさ”を提供できると思いました」

1995年に起きた阪神・淡路大震災以降、リフォームの需要は増え続けていた。住まいを劇的に変えるリフォームをテーマにしたテレビ番組が人気となったこともあり、「修繕」というイメージしかなかったリフォームに「住まいを生まれ変わらせる」という新たなイメージが加わり、扱う金額も大きくなっていった。しかし、リフォーム業の代理店であれば、マンションの一室で誰でも起業できることもあり、一部には悪質な業者も存在。優良企業からそうでない企業まで、玉石混交の状態となっていた。
「悪質な会社は駆逐し、同業他社も巻き込んで、リフォームという業界をさらに魅力的にしていきたいと思いました。そのためには、当社が先頭集団に入り、業界を牽引する存在になっていこうと考えたのです」

効率よく自社を拡大

同社がM&Aを積極的に戦略に取り入れることになった理由は主に2つあった。
1つは、スピード感だ。
「実は10 年以上前から、M&Aをやる必要があるだろうと考えていました。業界の先頭集団に入り、ペースメーカーになるという設計図を描いたとき、自分たちで成長していくだけでは成長スピードが遅くなってしまうからです。M&Aを活用することで、より早く目標に辿り着く可能性が高まると思いました」

2つ目は、先行するアメリカをみて、遠からず日本でもM&Aが行われるようになると考えたからだ。
「国内では、経営者の平均年齢が上がってきていると感じていましたし、後継者不在の企業も多い。M&Aの機運は高まってくるだろうと思っていました」
大本氏の予測通り、今、日本でもM&Aが増えている。これまで着実にM&Aを行えるように準備してきた同社は、更なる事業拡大を目指し、積極的にM&Aを行うことにしたのだ。

こうして17年、最初にM&Aを行ったのが、さかえ畳店だ。
「M&A先の選定基準としては、リフォームに関してシナジーが出しやすいことと、理念を共有してもらえるかどうかです。また、1社目は特に規模感も重視しました。初めてのM&Aでしたから、慎重に進めたいと思い、当時売上規模が47億円ほどあった自社よりも売上規模が小さい企業を選択しました」
その後も、同社がそれまであまり得意としていなかったリペア・修繕分野や、同社が進出していないエリアを拠点とする会社など、これまでに5社のM&Aを行っている。

変化の種を植え付ける

同社の大きな特徴の一つとして、自走自考をモットーとした自由な社風がある。
「お客様への提案の裁量といった業務面だけでなく、リモートや在宅ワークなどの働き方も自分で選べるようになっています。昇進についても、手を挙げた人が対象になる。昇進したくない人はしなくてもいいのです」
とはいえ、この独自の文化をM&A先に押し付けるようなことはしない。
「一番大事にしているのは従業員の安心感の醸成です」

M&Aをした企業の従業員は、「これからどうなってしまうのか」という不安を持っている。そんな時に会社の文化を統合するとなれば、戸惑い、不安は大きくなってしまうだろう。
「まずは私が従業員と1対1でコミュニケーションを取り、その中で安心感を高めてもらえるように努めます。また、給与や休日日数などの制度に関しては、より働きやすい環境になるように変更します」

例えば、2社目にM&Aをした日積工業は、年間休日数を一気に30日ほど増やし、アートリフォームの基準に揃えた。働く環境が良くなると、従業員には「これからがんばろう」という前向きな気持ちが芽生える。自走自考という社風についても、グループとして一緒に仕事をしていく中で、互いに価値観を受け入れ、自然と馴染むようになっていった。
「この制度の変更を、私は“変化の種を植えていく”と表現しています」

同社は、30年までにグループトータルでの売り上げ300億円、1000人規模の会社にしていくという目標を立てている。その中の3分の1はM&A等で成長させていく予定だ。
お客様も従業員も、リフォームに関わるすべての関係者が、リフォームをすることで“豊かさ”を感じられる未来をつくる──。ビジョン実現のため、今後もM&A 戦略を積極的に進めていく考えだ。

イメージ
リフォーム後が具体的にイメージできるように、店舗に併設されたショールーム。さまざまな工夫により総合リフォーム店売り上げ4 位になるほどの成長を遂げている

Company Profile

  • 会社名:株式会社アートリフォーム
  • 所在地:大阪府吹田市千里万博公園6番3号3F
  • 設立:1985年(創業 1952年)
  • 資本金:1000万円
  • 従業員数:276名(2024年1月1日現在)
  • https://www.artreform.com/

※本記事は、当社発行の月刊誌『月刊ビジネスサミット(現:『月刊次世代経営者』)』2024年3月号の記事をもとに、Web用に一部加筆・修正しています。記事の内容は執筆当時の情報に基づきます。