売り上げ100億円を目指す
業容拡大でグループとして多方向に成長
福祉施設や障がい者グループホームなどの建設で定評のある総合建設会社、万葉建設。同社は創業者の佐々木俊一社長のもと、2020年から積極的にM&Aを展開。現在までに6社をM&Aし、新会社を3社設立。計9社を擁するグループだ。同業のみならず、建設業とはまったく関係のない異業種についても次々とM&Aをしている同社の成長戦略について、佐々木氏に話を聞いた。
Profile
万葉建設株式会社
代表取締役社長 佐々木 俊一(ささき しゅんいち)氏
1969年生まれ、千葉県出身。大手ゼネコンから父の経営する工務店を経て独立。2005 年、万葉建設を設立。ワークライフバランスを充実させる仕組みづくりや、資格取得支援制度を設けるなど「社員第一」を経営理念に掲げて事業を展開。ボランティア活動にも積極的に貢献している。
工務店からの独立ゼロからのリスタート
万葉建設は、創業者の佐々木俊一社長が35歳の時に創業した建設会社だ。父親が工務店を経営しており、小さい頃から建設業を身近に感じていた佐々木氏は、専門学校に通って大手ゼネコンに就職。その後、父親からの依頼で父が経営している工務店を手伝うことになった。
「工務店は地元ではそれなりに大きな会社で、公共工事なども手掛けていました。父とは10年ほど一緒に仕事をしましたが、仕事に対する考え方や姿勢が違い、独立することにしたのです」
独立を決意したのは2005年のこと。工務店では専務としてさまざまな仕事の中心的存在として活躍していた佐々木氏だったが、仕掛かり中の仕事はすべて段取りをつけ、裸一貫で独立。千葉で新たに創業したのが万葉建設だ。
創業から20年が経った現在では、公共工事、個人住宅の新築やリフォームをはじめ、事務所、倉庫・工場、福祉施設や老人ホームまで、幅広い分野の建設事業を手がけている。
「当社では、たとえば一人の人が『家を建てたい』と相談に来てくれればその相談に乗りますし、ライフステージが変わって家のリフォームや自分が勤めている事務所の耐震工事などを相談されれば、喜んで担当させていただきます。家や建物は、人の人生に大きくかかわるものです。だからこそ、何かを依頼されればそれをすべて叶えられるような建設会社として、地域の人びとから頼られる存在となっていきたいと思ったのです。そんな想いで一つひとつノウハウを積み重ねた結果、現在ではさまざまな建築物を手がけることができるようになりました」
なかでも、近年は福祉施設の建築に力を入れている。福祉に関係する建築物の場合、法律の規制や周囲の住環境の問題など、クリアしなければならないハードルが他の建築物よりもたくさんある。一つひとつ丁寧に取り組んできたことで練度を上げ、現在では福祉関係施設の建設に強い会社として行政からも頼りにされる存在となっている。
M&Aで100億円企業を目指す
佐々木氏が最初にM&Aを行ったのは、20年のことだ。
「会社を創業した時、『人のためにやっていきたい』と強く思ったのと同時に、目標として、年商100億円の会社にしたいと考えたのです」
経営者仲間など周囲を見渡してみた時、会社の創業者で年商10億円ほどに自社を拡大させている人は何人もいた。だが、100億円にまで到達させている人はいなかった。
「知り合いが誰も達成していないなら、自分がやってみたいと思いました。何より、『人のためにやる仕事』を続けていくのであれば、規模が小さいよりも大きいほうが影響力があります。10人より100人、100人より1000人の人のためになる仕事をしていくには、会社規模は大きくなければいけないと思ったのです」
佐々木氏は、年商100億円を目標とし、同社の規模を順調に拡大していった。だが、ゼロから立ち上げた建設会社を100億円規模にしていくには時間がかかる。
「数年やってみて、このまま大きくしていくと、私が一代で到達するのは50億円くらいまでが精一杯なのではないかと感じるようになりました。100億円に到達させるために何をすればいいかと考えた時、M&Aという選択肢が浮かんだのです」
佐々木氏はM&Aについて独学で学び、20年、最初のM&Aを行った。同じ地域にある、売り上げ5億円ほどの同業他社だった。
「その会社は、社長が60代半ばを過ぎ、将来のビジョンが描けなくなり売却に踏み切ったということでした。どんな会社か見てみると、良い取引先を持っており、業績は安定。働いている人たちも優秀な会社でした。私であれば、この会社を現状よりももっとよくできるだろうと思いました」
佐々木氏は5年後、10年後、その会社をどのようにしていきたいか、具体的なビジョンを考え提案。それが売却側のオーナーに響き、M&Aは実現した。M&A後は、それまで発注が多くて受けきれず、断っていた仕事を引き受けてもらうことでシナジーを出していった。

未来像が描ける会社を選定
佐々木氏がM&A先を決める際、売り手側の財務や現状の売り上げよりも大切にしていることがいくつかある。
「最初にM&Aをした会社もそうでしたが、とくに深く見るようにしているのは、『従業員にどのような人たちがいるのか』、『どのような会社と取り引きをしているのか』、『協力会社はどんな会社か』ということです」
M&Aで自社を売りに出す場合、その理由の多くが後継者不在で先行きが見えないことや、財務状況が悪化して自社だけでは近いうちに立ち行かなくなりそうなど、ネガティブな場合が多い。
「とはいえ、どんな会社にも、それまで会社として存在してきたからには、その会社ならではの〝強み〟が必ずあると思っています。私が経営に携わることでそうした強みを伸ばせるというビジョンがイメージできるかどうかを、M&Aを進める指標としています」
たとえば、同社のグループの中には、異業種ながらシナジーを見出せた例として、ふとんなどの寝具の卸売やリースを行う会社がある。新求(千葉県千葉市)という、創業150年の老舗だ。
「寝具の卸売やリースの会社ですから、建設業とは全く関係のない業種です。ただ、その会社の取引先には、ホテルや温浴施設、病院、老人ホームなどがありました」
こうした施設は、万葉建設の新規取引先になり得る。実際、新求をM&Aしたことで、旅館の増築や温浴施設の大規模改修などの情報をいち早く入手。万葉建設の営業担当者が新求の担当者と一緒に営業に行き、工事の提案をする等、新たな販路を開拓することができている。
また、万葉建設は、高齢者や障がい者の施設の建設を得意としているため、逆に新求の営業担当者が万葉建設の取引先に行き、ふとんやリネン類などのリースを担当できるようになるなど、双方で販路拡大が可能となっている。
軸足を増やし会社を安定させる
佐々木氏がM&Aを行おうと考えたもう一つの理由として、事業の軸足を複数にしていきたいという考えがあった。
「M&Aを積極的にやっていく以前の当社は、建設業一本の会社でした。軸足を太くすることは重要ですが、現在のようなさまざまな環境の変化を考えると、建設業一本足ではなく、まったくの異業種をグループに入れておいたほうがいいのではないかと考えるようになりました」
そのため、新求の例のように、全くの異業種であっても「これはシナジーが見込める」と思った会社については積極的にM&Aを検討している。
仲介会社を活用して異業種の情報を収集
とはいえ、業界が違えば、経営者仲間などからM&Aの情報が入ってくることはほとんどない。
「私の場合、20社ほどの仲介会社の担当者と直接話をして、当社がM&Aできそうな企業をピックアップしてもらっています」
佐々木氏は付き合いのあるM&A仲介会社の担当者から、「良い」と思えば業種を問わずM&Aを行う〝ストロングバイヤー〟として認知されている。そうすることで、業種業界を問わず、佐々木氏がM&Aをしたいと思うような会社を紹介してもらえる可能性が高まるからだ。
より良いM&A先を紹介してもらえるような関係性をM&A仲介会社の担当者と構築してきたことで、現在、佐々木氏の元には、M&A先が積極的に紹介されるようになっている。
「たとえばそうして紹介された会社の中には、映像制作会社など、まったくの異業種もあります。その制作会社は、当社でM&Aすることになりました」

佐々木氏がM&Aをする際、誰を社長にするかも重要なポイントだという。この映像制作会社の場合は、まったくの異業種だということもあり、万葉建設から人を出すのではなく、制作会社のなかでマネジメントができる人材を引き上げ、社長に抜擢。会社をまとめてもらっている。
「建設業界は昨今深刻な人手不足に陥っています。当社は同業他社と比べれば、人が定着しやすい環境ではありますが、業績が上がっていることもあり、採用が追いつかないほど仕事がある状態です。そうなると、M&Aをしたからといって、当社のマネジャー陣をM&A先の会社の社長や経営陣として送り出すことは難しいのです」
それゆえ、M&A先の選定基準として、近年ではなるべく売り手側のオーナーが社長を継続するか、社内に社長として立てる人材がいるかどうかも条件とするようになっている。
相手の良いところに注目する
M&Aでは、売り手と買い手、双方の合意が必要だ。同社の場合、社長同士が話をするトップ面談を終えると、相手側の社長から「万葉建設にグループインしたい」と言われることも多いという。
「私は、面談の際には必ず相手の会社の良いところに注目するようにしています。どんな会社でも良いところは必ずあるからです。当社にグループインしてもらえれば、そこをきちんと伸ばしていけるという話をするのです」
もちろん、相手の会社の従業員の待遇や福利厚生などについても、どのようにしていくつもりなのか、相手にプラスになるような内容を考え、伝えている。同時に、よくないと思った点についてもきちんと伝え、資料を見て気になったところは、必ず確認する。
「表情や身振り手振りといった相手の反応を見ることで、その人が誠実かどうかはだいたいわかります。だからこそ、きちんとひざを突き合わせて対面で話をすることもM&Aにおける大切なポイントだと考えています」
なお、同グループの場合、業種業態が多様なこともあり、昇級制度などを統一することはしていない。ただ、一つひとつの会社が、どうすれば財務を強くできるのか、売り上げを伸ばすことができるのか、人を拡充することができるのかというノウハウを共有し、それぞれの会社が自走できるように引き上げている。
「能力のある人材がいる会社でも、後継者の不在やコロナ禍など、予想もつかない要因で急に会社が傾いてしまうことは、起こり得ることです。でも、ちょっとした知恵や戦略によって復活できる要素もあるのです。従業員が路頭に迷わないためにも、M&Aは必要なことだと考えています」
万葉建設グループは、現在、グループ全体で約40億円の売り上げを達成している。「私が65歳、つまりあと10年後くらいまでには、目標だった100億円企業にできるのではないかと思っています」
今後も相乗効果の高い会社のM&Aを行い、従業員を大切にしながら一つひとつ実績を積み重ねていくことで、その成長を加速させていく。
Company Profile
- 会社名:万葉建設株式会社
- 所在地:千葉県八千代市大和田新田920-12
- 設立:2005年
- 資本金:8000万円
- 従業員数:28名(2025年12月現在)
- https://man-you.jp/
※本記事は、当社発行の月刊誌『月刊次世代経営者』2026年3月号の記事をもとに、Web用に一部加筆・修正しています。記事の内容は執筆当時の情報に基づきます。