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M&A戦略インタビュー

M&Aをブースターとして会社の成長を加速
上場のその先を見据えるIT企業

ゲームから医療システムまで、幅広い分野でITソリューションを提供しているFunkit。同社は強みであるゲーム制作や運用のノウハウを活用し、教育分野にも進出。2018年に自社でつくった保育園用のコンテンツや運用サービスを実践する場として保育園の運営を開始。企業のIT部門、保育園やインターナショナルスクールなどをM&A。上場を目指し、事業規模拡大を加速させている。

Profile

株式会社Funkit
代表取締役 吉村 勇作(よしむら ゆうさく)氏

吉村 勇作氏

1973年生まれ。98年にテンダ入社。2003年、取締役就任。15年テンダ代表取締役副社長を退任し、Funkitの取締役に就任。経営体制を刷新。受託開発やSES、スマートフォン向けゲーム開発を手がけ、18年からは保育園の運営も開始。ITと保育を組み合わせた事業を展開。保育ICTプロダクトの開発を推進している。

経営刷新とともに踏み出した最初のM&A

2012年設立のFunkit(東京都豊島区)は、IT事業と保育・教育にかかわる事業をメインに展開する企業だ。IT事業では、受託・請負開発、SES(※1)などの企業支援を行っている。また、DX支援やアプリ開発といったソリューション事業も展開。近年では、保育現場の改善、保育園における幼児教育の向上を果たすべく、保育園向けソリューション「CURIO(キュリオ)」をグループ会社で開発している。

※1 SES:エンジニアの技術力や労働力をクライアント企業に提供する契約形態やサービス。エンジニアがクライアント先に常駐して、システム開発や運用・保守などを支援する

同社の代表を務める吉村勇作氏は、ゲーム音楽などをつくるクリエイターからエンジニアに転向した経歴を持つ。IT企業に入社後は、さまざまなプロジェクトに参加して技術を磨き、入社5年後には取締役副社長を任されるまでになった。そんな中、自らすべての舵取りができる経営をしたいと考えるようになり、独立を決意。Funkitの代表となり、ゲーム開発や受託開発、SESなどで会社を成長させていった。

実は同社の最初のM&Aは、吉村氏が代表となってすぐ、15年のことだった。
「私は中学、高校と宮崎県で過ごした経験があり、そのときの縁で、宮崎県にある会社のIT事業を承継しないかという打診をもらったのです。前職で役員をやっていたときに、M&Aを行ったことがありましたから、M&Aが会社を拡大する際のブースターとなり得るということはわかっていました」
東京と宮崎という離れた場所ではあったが、IT関連事業は業務上リモートでの仕事も多く、本社と支店が離れていることは、業務を遂行する際のマイナス要因にはなりにくい。
「会社を立ち上げてすぐということもあり、M&Aで優秀なエンジニアを一気に増やすことができることに魅力を感じました」

ITと保育を融合し独自の教育事業を構築

次にM&Aを行ったのは20年のこと。マンションの売買・賃貸・保有を中心事業とする不動産会社から、保育園事業を承継した。Funkitは18年に企業主導型保育事業(※2)へ参入しており、この事業を推進するエデュケーション事業拡大のためのM&Aだった。
「当社の特長として、IT事業のなかでも、フリーミアム(基本サービスを無料で提供し一部の顧客から課金する仕組み)のゲーム運営に長けており、ゲーミフィケーション(※3)に強みをもっていました」

※2 企業主導型保育事業:企業が主体となって運営する保育施設。施設の設置企業や提携している企業で働く従業員の子が利用でき、また、地域住民の子どもを受け入れる「地域枠」を設けての運営も可能
※3 ゲームに夢中になる要素を、ゲーム以外の領域に応用して設計すること

ゲームといえば、これまで総じて「子どもの教育によくないもの」と言われてきた。だが、近年では脳科学的に「よい」効果があるという研究もあり、ゲームを教育に活用する道が模索されている。
「ゲームが教育によくないと言われる背景には、時間を忘れて熱中してしまう依存性の問題や、戦闘シーンなどの残虐な表現が他者の痛みに対する感受性を低下させるのではないかという懸念がありました。でも、そうした表現も、たとえば剣でモンスターを切るような戦闘ゲームは、剣を虫取り網に、モンスターを虫に、荒野を野原の映像に変えれば、ゲームの要素はそのままに、野原で虫を採る子ども向けゲームに変換できます。当社がこれまで培ってきたゲーム制作のノウハウは、そのまま知育分野に活かせると考えたのです」

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「CurioSCREEN(キュリオスクリーン)」は、プロジェクターで壁面と床に映像を投影。クイズやリズム遊びなど、子どもが遊びながら学べるツールとなっている
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なるべく多くの人に課金してもらえるように考えてきたゲームの仕組みも、子どもが夢中になって学べる仕組みとして応用ができる。吉村氏はエデュケーション事業に参入を決意。社会貢献度が高く、ユニークな価値を生み出すために研究開発を行い、17年、プロジェクターから投影される映像に幼児がタッチして遊びながら学ぶという、オリジナルの仕組みをベースにした知育システム「ゆめくり」をリリース。以後「CurioSCREEN」と改め、大学とも連携しながら子どもの学びを深めるツールとして発展させている。

また、18年、保育園での教育の質向上や運営の効率化を図るシステムをつくる実践的な場として、企業主導型保育園「フェニックスキッズ」の運営をスタートした。
「スケールメリットを活かすため、まずは東京都内で5園、宮崎県の支店を中心に5園、合わせて10園の運営をスタートさせました」
そして2年後の20年、先に述べたように不動産会社が運営していた保育園をM&Aした。
Funkitと同じような企業主導型の保育園の場合、1園のみを運営している事業者も多い。だが、行政が園児を割り当てる認可型の保育園と違い、企業主導型の場合、社員の中に子どもを預ける親が少なければ、園児の募集は自分たちで取り組む必要がある。書類作成などの手間や採用の難易度が高いなど、経営効率のよい運営が難しいという現状があった。
「1園だけでやるよりも複数の保育園を運営したほうが販管費は安くなりますし、採用、給与計算、行政への報告なども本社で一括してできるため、効率的な運営が可能になります」

20年にM&Aをした保育園は、東京都の中でも西新宿という立地にあった。Funkitが運営するほかの保育園と、距離的にも程よく近く、人手が不足した場合は、他園のスタッフ同士で補完し合えると考えたことも決断の理由となった。
さらに、21年には名古屋にあるインターナショナルスクールと外国語スクール事業を行っている企業をM&A。教育事業の充実を図った。
また、実際に保育園を運営してみると、保育士の仕事は煩雑で手作業で行う事務作業が多くあるという実態がわかってきた。
「そうした事務作業の効率化こそ、当社が得意とするITやDXで達成することができます」
そこで、日々の保育の記録、保護者とのやりとり、保育計画の作成、園児の登園・降園管理など、働く保育士たちも園児の保護者もスマホなどで双方向のやりとりができる機能を開発。20年、保育業界向けの業務効率化ツール「CurioKids」をリリース。先進的で画期的なシステムとして導入事例を増やしている。

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Funkit が企画制作する幼児~児童向け教育コンテンツ/ システム「CurioKids(キュリオキッズ)」
保育園を運営しているFunkit ならではの、現場の声を反映した業務効率化ツールだ

上場を見据え成長戦略にM&Aを組み込む

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Funkit の経営戦略図
出所:FunkitWeb サイト

同社では、M&Aを会社を成長させるブースターとして、経営戦略に組み込んでいる。
「実は、5年後に東証スタンダード市場への上場を計画しています。ただ、会社は上場して終わりではありません。スタンダード市場は“通過点”の一つ。その先にあるプライム市場への上場も目標としています」
さらに、今後のM&Aは、主にIT事業をスケールアップさせるために行い、保育事業に関しては拡大路線をとらず、現状の規模で運営していく予定だという。同社が保育園の運営に乗り出した当初と、事業環境が大きく変化してきたのがその理由だ。
保育園運営を始めた18年頃は、保育園不足が社会課題として大きく話題となっていた。だが、施設の整備と少子化により、現在待機児童は解消傾向にある。

特色ある保育園が選ばれる時代になってきたこともあり、保育園事業に関しては保育の質の向上や支援ツールの開発などに力を入れていく予定だ。
現在同社では、運営を委託された園と合わせ、13の保育園を運営している。同社の売上高は約19億円。IT事業が13億円ほどで、残り約6億円が保育園事業となっている。

人材と企業文化の承継がM&A成功の鍵

M&Aのメリットについて、「一番は人材を獲得できること」と吉村氏は語る。
エンジニア不足は近年ますます深刻化している。M&Aでは、転職市場などに出てこない人材をグループに迎え入れられる可能性があり、同社にとって大きなメリットだといえる。
また、M&Aによって新たな取引先とのネットワークを獲得できることも、メリットの一つだ。
「新規開拓は続けていますが、新たな顧客を獲得するには時間がかかります。現在、すべてのサプライヤーと繋がりがあるというわけではありません。そのため、新しいサプライヤーとの接点を持てることもM&Aに期待することの一つです」

同社の場合、最初のM&Aによって宮崎に拠点ができたことで売り上げは伸びたが、効果はそれだけにとどまらない。
「採用面でもよい効果が生まれています」
宮崎県で採用活動を行うと、「東京で働きたい」と応募してくる人もおり、東京だけで事業を展開していた頃よりも幅広い人材を獲得できているという。

一方で、M&Aには慎重に向き合うべき課題もある。
売却を希望する会社には、業績が低迷しているケースも少なくない。もちろん、そうでない場合もあるがM&A後に経営改善が必要となることもままある。

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5年後の上場に向け、ビジョンを共有。いきいきと働くことができる環境が構築されている

実は吉村氏には、前職時代に強引なM&Aを進めた経験があった。営業スタイルなどを一方的に変えようとした結果、離職者が増え、社員のモチベーションも上がらず業績改善にも繋がらなかったのだ。
そうした経験を通じて吉村氏が学んだのは、M&Aは単に会社を買うことではないということだった。
「M&Aを行う際には、相手企業の歴史や文化も含めて引き継ぐのだという意識を持つ必要があります」
単に、「これからはこうしたい」と一方的に方針を示すのではなく、相手を理解し、企業文化も含めて承継したうえで事業シナジーを発揮する。その姿勢こそが経営改善に繋がると考えるようになったという。
吉村氏がM&A先を選定する際に重視している基準は、「一緒になって、互いにハッピーでいられるかどうか」だ。
「そのためにも、M&Aの際にはできるだけ社員一人ひとりと話をする時間を設けるよう心がけています」
M&A先の社員にとって〝上場〟という明確な目標があり、成長機会や将来像を想起できることは、Funkitの魅力の一つといえるだろう。これまで実施してきたM&Aでは、いずれの会社も業績が向上し社員同士の人間関係も良好だという。
「互いを尊重し合う関係こそが、よりよいM&Aに繋がるのだと思います」

Company Profile

WBPグループ株式会社

  • 会社名:株式会社 Funkit
  • 所在地:東京都豊島区南池袋3-13-8 ホウエイビル9F
  • 設立:2012年
  • 資本金:1000万円
  • 売上高:18億7758万円(2025年5月期)
  • 従業員数:222名(2025年5月期)
  • https://funkit.co.jp/

※本記事は、当社発行の月刊誌『月刊次世代経営者』2026年7月号の記事をもとに、Web用に一部加筆・修正しています。記事の内容は執筆当時の情報に基づきます。